それで誰かに相談すると、たいてい「休みなよ」と返ってきます。正しいアドバイスです。ただ、正しいのに、まったく実行できない。
休み方が分からないからです。この記事は、そこだけを扱います。
「疲れてるなら休んで」が、いちばん効かない
休めない人は、休むことの価値を知らないわけではありません。むしろ十分に知っています。知ったうえで、できない。
試しに、予定を空けてみた日のことを思い出してみてください。何をしましたか。おそらく、ソファに座って、スマホを手に取って、気づいたら夕方だった——そんな一日ではなかったでしょうか。そして夜、「今日、何もしてないのに疲れた」と思う。
これは、休めていないのではありません。休む時間はあったのに、休み方が分からなかっただけです。
怠けているわけでも、根性が足りないわけでもありません。休むという行為には、実はそれなりの技術が要ります。
「休んで」というアドバイスが効かないのは、それが「時間を空けろ」としか言っていないからです。空けた時間をどう過ごすかについては、誰も教えてくれません。
その前に——休養ではなく受診を考えてほしいとき
先に、この記事では扱えない話をしておきます。
疲れの中には、休み方を工夫して対処するものではないものがあります。次のような状態が2週間以上続いている場合は、休養で様子を見るより、医療機関に相談することを検討してください。
受診を検討する目安
・眠れない、あるいは眠りすぎる状態が続いている
・食欲がない、体重が落ちている
・朝、起き上がれない日が増えている
・これまで楽しめていたことが、楽しいと感じられない
・自分を責める考えが止まらない
相談先は、心療内科・精神科のほか、まずはかかりつけの内科でも構いません。気分の落ち込みが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがあるときは、2週間を待たずに相談してください。
この記事の以降の内容は、あくまで「病気というほどではないが、休めていない」という状態を想定しています。判断に迷う場合は、迷っていること自体を相談の理由にして構いません。
何もしない時間が苦手なのは、目的がないから
なぜ、空いた時間をうまく使えないのか。理由はシンプルだと思っています。
人は、目的のない時間を落ち着いて過ごせないからです。
やることが決まっていない時間は、宙ぶらりんになります。宙ぶらりんは居心地が悪い。だから手が空いた瞬間にスマホを開く。スマホには「見る」という目的があるからです。休むためではなく、何もしていない状態に耐えられないから、画面を見ています。
「空いた時間」。何をするか決まっていないので、落ち着かず、結局は情報を処理して終わる。
「これをする時間」。やることが決まっているので、他のことを考えずに済む。
逆に言うと、休むには「やること」が要るということです。矛盾しているようですが、そうではありません。必要なのは、頭を使わずに済む「やること」です。
「何も考えないようにしよう」と意識するのは、ほぼうまくいきません。考えないでおこうと思うこと自体が、考えることだからです。呼吸を深くしようとするほど浅くなるのと、同じ構造だと思っています。
本当は、外に出るのがいちばん早い
頭を使わずに済む「やること」として、昔から挙げられてきたものがあります。
体を動かすこと
散歩、ジョギング、自転車。一定のリズムで体を動かしていると、考えごとが続かなくなります。息が上がってくると、悩みの細部を検討するどころではなくなる。
土に触れること
庭いじり、家庭菜園、草むしり。手が汚れる作業には、不思議と没頭できます。植物は、こちらの都合に関係なく育ったり枯れたりするので、思い通りにしようという発想自体が成立しません。
自然の中にいること
川、海、山、風の音。人が作ったものは、たいてい何かを伝えようとしています。看板も、広告も、通知も、こちらの注意を引くために設計されています。自然にはその意図がないので、注意を持っていかれません。
結局、人間も動物です。体を使い、自然の中にいるときが、いちばん頭が静かになる。これは道具も費用もいらない、いちばん確実な方法だと思っています。
この記事で伝えたいことの半分は、ここで終わりです。散歩でも土いじりでも、続けられるならそれが最良です。この先を読む必要はありません。
なのに、ちゃんとしている人ほど抜け出せない
ただ、多くの人はそれができません。しかも、きちんと生活している人ほどできないという逆転が起きます。
理由は、意志ではなく環境にあります。
仕事、家事、家族の予定、学びの時間。埋まっているカレンダーは、充実の証拠として扱われます。空白があると、埋めたくなる。「何もしない予定」は、予定として認められにくい。
買い物も、仕事も、人との連絡も、外に出ずに済みます。効率的であるほど、外に出る理由がなくなる。天候に左右されない生活は快適ですが、天候に触れる機会がゼロになるということでもあります。
スマホは、空白を埋める道具としてよくできています。3分の空き時間でも何かを処理できてしまう。処理できるものがある限り、宙ぶらりんの時間は生まれません。
つまり、休めないのは環境がそう設計されているからであって、その人が弱いからではありません。効率よく、きちんと暮らそうとするほど、人工的な環境から出る理由がなくなっていく。
「毎朝30分歩きましょう」と書くのは簡単ですが、それができる人はもう困っていないはずです。困っているのは、それが続かない人のほうです。私自身、続きませんでした。雨が降る、朝が寒い、その日は忙しい——中断する理由はいくらでも湧いてきます。
気合いでは続かないので、仕組みにした
ここから先は、私個人の話です。一般的におすすめできる方法として書くものではありません。
私は「毎日外に出る」を続けられなかったので、家の中に、何も考えない時間が発生する仕組みを置くという方向に切り替えました。私が選んだのは、よもぎ蒸しでした。
理由は、効果ではなく条件です。
座っている間はスマホを触れません。立ち上がることもしない。「何もしない」を意志で守る必要がなく、状況の側が何もさせない——これが私にとっては大きかったです。
雨でも、寒くても、夜遅くても同じようにできます。中断する理由が減ると、続く確率が上がる。散歩が続かなかった私にとっては、この差が決定的でした。
03で書いたとおり、休むには目的が要ります。「休む時間」ではなく「よもぎ蒸しをする時間」という名前がついていると、罪悪感が出にくい。やることがあるので、何もしていない状態に耐えなくて済むという、少し変な理屈です。
よもぎ蒸しが気分や心の状態に働きかけると確認された研究は、私が探した範囲では見当たりませんでした。当店としても、そうした効果は掲げていません。「これをすれば元気になる」という話ではないとはっきり書いておきます。
私は93日連続で使うつもりで始めて、気づいたら200日を超えていました。ただ、それで何がどう変わったのかと聞かれると、正直に答えられることは多くありません。体重は変わりませんでした。時期の問題や、単に年をとって生活が変わった影響もあると思います。私が確かに言えるのは、何も考えない時間が毎日30分、確実に発生するようになったという事実だけです。
そして、これはよもぎ蒸しでなくても構いません。湯船に長く浸かる、サウナに通う、写経をする、皿を手で洗う——「他のことができない」「天候に左右されない」「やることの形をしている」という3つを満たすなら、何でも同じ役割を果たします。
・「休んで」が効かないのは、時間を空けろとしか言っていないから。空けた時間の使い方は誰も教えてくれない。
・不調が2週間以上続くときは、休み方の工夫ではなく受診を検討する。
・何もしない時間が苦手なのは、目的がないから。休むには、頭を使わずに済む「やること」が要る。
・本当は散歩でも土いじりでもいい。外に出て体を動かすのが、いちばん確実で費用もかからない。
・それでも続かないのは意志の問題ではなく、環境が「外に出ない生活」で完結するようにできているから。
・私は続かなかったので、家の中に仕組みを置いた。よもぎ蒸しでなくてもいい。何も考えない時間が発生するなら、方法は何でもいい。
よくある質問
まずは、外に出るところからで構いません。
散歩でも土いじりでも、続くならそれがいちばんです。
それが続かなかった場合の選択肢として、置いておきます。
ご不明な点はLINEからお気軽にどうぞ。
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