WHAT COMES OUT

よもぎ蒸しで何が出る? 壺に浮く油・泡・汚れは老廃物なのか。油膜の正体と壺診断を研究から調べました

2026年10月5日 公開 / 2026年10月24日 更新

先に結論:壺に浮くものを「老廃物」と確かめた資料は、見つかりませんでした

よもぎ蒸しのあとに壺をのぞくと、泡や油のようなものが浮いていたり、お湯が濁っていたりします。「これが体から出た老廃物です」と説明を受けたことがある方も、いるかもしれません。

この記事では、よもぎ蒸しを売っている立場から、「壺に出ているものは何なのか」を、研究や公的な情報をもとに調べました。

先にお伝えすると、よもぎ蒸しの壺の中身を直接調べた研究は、見つけられませんでした。そのため、近い分野の研究から分かることと、まだ分かっていないことを分けて書きます。

壺に浮く泡・油・濁りは、何でできている?

まず、薬草をお湯で煮出したときに、一般に起こることを整理します。

そこに、座っている人の汗や皮脂などが、混ざることはあります。ただ、どれくらい混ざるのかを調べた資料は、見つけられていません。

油膜(ギラギラした膜)は、どこから来る?

よもぎ(日本・韓国・中国でよもぎとして使われる3種類)の研究をまとめた2023年の総説では、精油が、よもぎから得られる主な成分だと整理されています。精油は、植物の香りのもとになる油で、テルペンと呼ばれる成分などでできています。

精油は一般に水に溶けにくく、多くは水より軽い性質があります。そのため、薬草を煮出したお湯の表面に、油のような膜として浮くことは、座っている人の体と関係なく起こりえます。香りの成分が蒸気に乗って出てくる仕組みは、よもぎ蒸しの香りはなぜ脳に届くのかで書いています。

ただし、これは植物の一般的な性質からの説明です。当店の壺に浮いた膜を分析したわけではありません。膜のどれだけが薬草の精油で、どれだけが水の中の成分や汗・皮脂なのかは、分かっていません。当店の薬草には、よもぎ以外の薬草も含まれます。

図1 壺に見えるものと、考えられる元

見えるもの考えられる元どこまで分かっている?
泡薬草の成分(泡立つ成分を含む植物があります)/煮立ったこと一般的に知られている
油のように見える膜薬草の精油(香りのもとになる油)、水の中の成分、皮脂などが考えられます実物を分析しておらず断定できず
濁り・色薬草の成分や繊維一般的に知られている
こびりつき成分が濃くなって器に残ったもの。水のミネラルが関わることもあります紅茶での研究あり
体から出た老廃物汗や皮脂などが混ざることはあります量を調べた資料は見つからず
当店の薬草のうち、どの薬草が何をどれだけ出しているかは、分かっていません。使用後の壺の中身を分析した資料も、見つけられていません。

つまり:壺に見えるものの多くは、薬草を煮出したことで出たものと考えられます。ただ、実物を分析したわけではありません。「体から出た」と言い切れる材料も、見つかっていません。


日によって量が違って見えるのは、なぜ?

「今日は汚れが多い」「前回より泡が多い」と感じる日があります。これは、お湯が蒸発した量の違いで、説明がつきます。

お湯が減る量は、座っていた時間、火力、室温、薬草や水の量で変わります。体調とは関係なく、見た目は変わると考えられます。お湯が減る理由については、よもぎ蒸しの水が減るのは、体が吸っているから——は本当?で詳しく書いています。

※当店の壺で、蒸発量とこびりつきの量の関係を測ったわけではありません。一般的な仕組みからの説明です。


「老廃物が出た」は本当?

よもぎ蒸しで汗をかくと、「老廃物が出た」と感じるかもしれません。ここは、汗の研究を見てみます。

体の中の老廃物を処理する主な場所は、腎臓や肝臓です。

図2 老廃物を処理するのは、主にどこ?

腎臓
主な役割血液の中の老廃物や塩分をろ過して、尿として体の外に出します。
肝臓
主な役割アルコールや薬などの有害な物質を分解して、体に害がないようにします。
汗
主な役割体温の調節です。老廃物を出す働きは、小さいとみられています。
腎臓は日本腎臓学会、肝臓は国立病院機構 長崎医療センター、汗は汗腺の総説(Baker 2019)の説明をもとにしています。割合を示した図ではありません。

つまり:汗をたくさんかいても、「老廃物がたくさん出た」とは言えません。壺に浮いたものを「老廃物が出た証拠」とする根拠も、見つかっていません。


「壺診断」で体の状態は分かる?

壺に残った泡の量や色、油の出方から体の状態を読み取る「壺診断」を、案内しているお店もあります。

当店では、壺診断を行っていません。壺の見た目から体の状態が分かることを、確かめた研究を見つけられていないためです。

壺の見た目は、次のような条件で変わります。体の状態を知るための手がかりとしては、当てにしにくいと考えています。

壺診断で言われたことが気になっている方へ。壺の見た目だけで、体のどこかが悪いと判断する必要はありません。気になる症状がある場合は、壺ではなく、医療機関で確認してください。


「汚い」と感じたときに確認できること

壺の中を見て、「汚い」と感じることがあるかもしれません。その多くは、薬草を煮出したときに出る成分と考えられます。料理で出るアクや、急須に残る茶渋に近いものです。

使ったあとの壺の汚れは、どう落とす?

所長が300日続けている手入れは、次の3つです(よもぎ蒸しを続けた結果|1週間・93日・300日の記録にも書いています)。

洗剤や道具など細かい点は、セットに付いている説明書に従ってください。所長の300日の記録では、座器にも壺にも、カビは出ていません。


それでも「すっきりした」は本当です

ここまで、「老廃物が出たとは言えない」と書いてきました。けれど、よもぎ蒸しのあとに「すっきりした」「体が軽い」「気持ちよかった」と感じたなら、その感覚は、あなたにとって本当の体験です。当店は、その体験を否定しません。

分けて考えたいのは、「感じたこと」と「その理由の説明」です。

理由が分からなくても、心地よさは心地よさのままです。汗をかくことについて研究で分かっていることは、汗をかくのは体にいい?「汗でデトックス」は本当か、研究でわかることと汗のかき方にまとめています。


よくある質問

よもぎ蒸しで、体から何が出ますか?
汗が出ます。汗の主な役割は体温の調節で、老廃物や有害な物質を外に出す働きは、腎臓や消化管に比べて小さいとみられています。壺に浮く泡や油が体から出たものかどうかを、確かめた資料は見つけられていません。
壺に浮いた泡や油、汚れは、老廃物ですか?
老廃物だと確かめた資料は、当店では見つけられていません。薬草を煮出すだけでも、泡や濁りは出ます。油のように見える膜が何でできているかは、実物を分析していないため断定できません。そこに汗や皮脂などが混ざることはありますが、それが「老廃物が出た証拠」とは言えません。
日によって壺の汚れ方が違うのは、体調のせいですか?
体調で変わると確かめた研究は見つけられていません。お湯が蒸発すると、溶け出した成分が濃くなり、水位が下がったところに跡が残ります。座った時間、火力、室温、薬草や水の量で、見た目は変わると考えられます。
壺診断は、当たりますか?
当店では壺診断を行っていません。泡や色、油の出方から体の状態が分かることを確かめた研究を、見つけられていないためです。体調で気になることがあるときは、医療機関に相談してください。
油が浮かないのは、効いていないからですか?
油の量で、効いているかどうかや体の状態が分かることを確かめた研究は、見つけられていません。油のような膜は、薬草の量や状態、お湯の量、座っていた時間などで変わると考えられます。油が少なくても、心配する必要はありません。
よもぎ蒸しは汚いですか?
壺に見えるものの多くは、薬草を煮出したときに出る成分と考えられます。自宅用の機材は自分専用で、使ったあとに壺を洗って内側まで乾かせば、清潔に保てます。レンタルの衛生については、レンタルページと利用規約をご確認ください。
汗をかいてすっきりするのは、気のせいですか?
気のせいではありません。汗をかいてすっきりした、気持ちよかったという感覚は、あなたにとって本当の体験です。ただ、それを「老廃物が出たから」と説明できる根拠は、見つけられていません。

・泡や濁りは、薬草を煮出すだけでも出ます。よもぎは精油が取れる植物で、油のような膜も体と関係なくできると考えられます(当店の壺の膜は分析していません)

・お湯が蒸発した量で、見た目は日によって変わると考えられます

・汗で老廃物を出す働きは、腎臓などに比べて小さいとみられています

・壺の見た目から体の状態が分かることを、確かめた研究は見つけられていません

・それでも、汗をかいてすっきりした感覚は、あなたにとって本当の体験です

壺の中身は、体の成績表ではありません。よもぎ蒸しが自分に合うかどうかは、壺ではなく、あなた自身の感じ方で決めてください。

AUTHOR
所長 / ASUCA認定よもぎ蒸しアドバイザー

ASUCA認定チャレンジの93日を経て、自宅でよもぎ蒸しを250日以上継続。使い心地や準備、片付けまで含めて発信しています。体験を効能に置き換えず、確認されていることと、確認されていないことを分けて書いています。

自分で確かめたい方へ

壺の中身ではなく、温かさや香り、準備や片付けが自分の暮らしに合うかどうかは、使ってみると分かります。気になることがあれば、LINEで相談だけでも受け付けています。

あわせて読みたい記事

参考(確認日:2026年10月5日):
・Baker LB. Physiology of sweat gland function: The roles of sweating and sweat composition in human health. Temperature. 2019;6(3):211-259.(汗による老廃物・有害物質の排出は、腎臓や消化管に比べて小さいとみられる)
・Sears ME ほか. Arsenic, cadmium, lead, and mercury in sweat: a systematic review. J Environ Public Health. 2012.(汗から重金属が検出された報告のまとめ)
・Rai S ほか. Plant-Derived Saponins: A Review of Their Surfactant Properties and Applications. Sci. 2021;3(4):44.(サポニンは泡を作る植物由来の成分)
・Spiro M, Jaganyi D. Kinetics and equilibria of tea infusion. Part 10—The composition and structure of tea scum. Food Chemistry. 1994;49(4):351-357.(硬水でいれた紅茶の膜に、炭酸カルシウムが含まれる。紅茶の研究)
・Choi JY ほか. Aroma-active compounds of Korean mugwort (Artemisia princeps orientalis). J Korean Soc Appl Biol Chem. 2014;57:323-329.(韓国のよもぎに含まれる揮発性の成分。壺の中身を調べた研究ではない)
・Robert M. Second-Degree Burn Sustained After Vaginal Steaming. J Obstet Gynaecol Can. 2019;41(6):838-839.(蒸気を当てる方法で2度のやけどを負った症例報告)
・日本腎臓学会「腎臓の構造と働き」/国立病院機構 長崎医療センター「肝疾患について」/ヘルスケアラボ(厚生労働省事業)「おりもの・かゆみ」
・Yu D, Huang NN, Du XW. Review of the Chemical Composition and Biological Activities of Essential Oils from Artemisia Argyi, Artemisia Princeps, and Artemisia Montana. Curr Top Med Chem. 2023;23(16):1522-1541.(よもぎから得られる主な成分は精油。確認日:2026年10月24日)
いずれも、よもぎ蒸しの壺の中身を直接調べた資料ではありません。